複式簿記のお話

会計・経理

経理をするにあたって誰しも最初に覚えるのは、やはり複式簿記の仕組みでしょう。

古くは15世紀のイタリアで考案されたといわれるこの複式簿記の手法で記帳された帳簿は、一般に単式簿記といわれる手法で記帳した場合の帳簿と比較して、様々な点で優れているといえます。

今回はこの複式簿記について考えていきます。

この記事でわかること
  1. 簿記とはどういうものか
  2. 単式簿記と複式簿記の仕組み
  3. 単式簿記と複式簿記の利点と欠点

複式簿記とは?

簿記とは?

まずは複式簿記とは何ぞや?の前に『簿記』とは何ぞや?からみていきましょう。

『簿記』とは、

企業の日々のお金の流れや取引といった企業活動を一定のルール従い記録(帳簿に記入する)ことによって、企業の財政状態や経営成績等を明らかにする一連の行為

のことをいいます。

企業はモノやサービスの売買、従業員への給与の支払い、借入や株式発行などによる資金の調達、、

など、日々様々な企業活動を行っていますが、こうした企業活動によって

  • 企業がいくら儲けたのか?
  • いくらお金を持っているのか
  • 商品の在庫はどれだけあるのか
  • 借金はいくらあるのか
  • 企業自身で負担している資金はいくらなのか?

などといった情報は、一つ一つの企業活動を「数字」に変換して「記録」し、この数字を一定のルールで「まとめ」、「整理」をして見やすくしていかなければわかりませんね。

この行為のことを簿記といいます。

そして、こうした情報は、経営者が経営判断を行うには当然不可欠な情報であり、株主や銀行といった外部の利害関係者にとっては、出資や貸付の可否判断を行うためにも不可欠な情報でもあります。

上記を踏まえ言い換えると、『簿記』とは

企業はいくら稼いだのか(経営成績)、稼ぐための原資をどれだけ持っているのか(財政状態)、などを明らかにし各利害関係者に「報告」するために、企業活動を数字で記録し、見やすくまとめ整理する行為。

といえます。そして、これを行う仕事を『経理』というわけですね。

「報告」で終わらせず、報告までに得られた数字・情報をもとに経営者等に有益な「提案」「改善活動」を行うことも重要であり、実際にはこうしたことを含めて『経理』とも言えますが、ここでは伝統的な『経理』の役割について述べています。

ポイント
  • 『簿記』とは企業の日々のお金の流れや取引といった企業活動を一定のルールに従い記録(帳簿に記入する)ことによって、企業の財政状態や経営成績等を明らかにする一連の行為のこと
  • いくら稼いだのか?=経営成績、稼ぐための原資をどれだけ持っているのか?=財政状態
  • 記帳・整理だけでなく、各利害関係者に「報告」までがいわゆる『経理』の仕事

複式簿記と単式簿記

さて、簿記とは何ぞやということが少しわかりましたので、ここで本題である複式簿記と単式簿記についてそれぞれ見ていきましょう。

単式簿記

単式簿記とは、ざっくりいえば家計簿やお小遣い帳の記録方法です。

ひとつの科目について(お小遣い帳であれば現金など)のみその増減(取引)を記録していきます。

例えば、ティッシュペーパー300円を購入した場合、単式簿記だと

消耗品費:-300

また、住宅ローン100,000円を支払った場合だと、

住宅ローン支払い:-100,000

などと記帳します。

こうして取引を記録していくことで、この例でいうと、何に現金を使ったか原因、現金はいくら残っているのか(結果)、ということを把握することができます。

シンプルで直観的にわかりやすいので、家計簿やお小遣い帳などのように入出金だけ把握したい、ということであればこれでも十分ともいえますね。

ただ、先述の例でいうと、

  • 現金の代わりにクレジットカードで払った場合はどう記帳するの?
  • 現金以外にも預金や電子マネー、株とか持ってるけど今いくらあるんだろう?
  • 住宅ローンの残高は今いくらだろう?

というように、単式簿記は、

  • 複数の科目があった場合記帳が難しい(やるなら科目ごとに別々に記帳が必要)
  • その科目(現金)以外の見たい情報がひとつの帳簿から把握できない

など、若干不便な面もあり、単一の科目についての記帳のしやすさの代わりに情報の精度が低いという欠点もある記帳法といえます。

こうした単式簿記の欠点を解消したのが複式簿記です。

複式簿記

単式簿記に対して複式簿記とは、「複式」、つまり単一の科目の取引の原因や結果だけでなく、複数の科目の取引の原因や結果を把握するための記帳法です。

ここで出てくるのが「借方」と「貸方」という概念です。

例えば、先述のティッシュペーパーの購入取引を複式簿記で記帳するならば、

(借方)消耗品費:300 / (貸方)現金:300

などと記載します。

左側の「借方」と、右側の「貸方」、それぞれに科目や金額などの情報を記載し、左右一つでワンセット(仕訳)です。

借方・貸方という名称にあまり意味はなく、複式簿記では左右に分けて情報を記載するんだな、程度の理解で大丈夫です。

なぜ左右に分けて記載するのか、それは取引の原因と結果の両方を一度に記載したいからです

もう一度先述のティシュペーパーの購入取引の仕訳を見てみましょう。

(借方)消耗品費:300 / (貸方)現金:300

ティッシュペーパーを購入する、という取引によって起こったことは、

  • ティッシュペーパーを手に入れた
  • 現金が300円減少した

の二つですね。言い換えれば

現金が減少したのはティッシュペーパーを入手したからである

といえます。

そこで、現金の減少という「結果」を貸方に、ティッシュペーパーを入手したからであるという「原因」を借方に記載してみましょう。

こうすることで、この取引によって何が生じその原因は何だったのか、まで一つの仕訳で正確に把握することが可能になるわけです。

また、単式簿記とは違い、一つの帳簿で複数の科目の取引が可能となります。

例えば、現金の代わりにクレジットカードで購入した場合は

(借方)消耗品費:300 / (貸方)未払金(クレジットカード):300

と貸方を変えるだけでOKで、現金が関係しない取引も問題なく一つの帳簿に記帳できます。

単式簿記で無理やり記帳するならば、現金と未払金(クレジットカード)の両方の帳簿を作成し、支払手段に応じて分けて記帳する、となりますが、、、まあ面倒ですね。。

さらに、現金以外の科目も記帳できるのであれば、現金以外の科目の残高も帳簿を起点にして把握できるということでもあります。

例えば、この1か月間でのクレジットカードの未払金残がいくらになったかを把握したい場合は、帳簿から一か月間の仕訳のうち、「科目:未払金(クレジットカード)」が出てくる仕訳を確認し、先月末の残高に加減算すれば求めることができますね。

このように単式簿記にあった欠点

  • 複数の科目があった場合記帳が難しい(やるなら科目ごとに別々に記帳が必要)
  • その科目(現金)以外の見たい情報がひとつの帳簿から把握できない

を複式簿記は克服しているといえます。

先述した『簿記』とは定義・目的からしても、より有用な情報を把握できる複式簿記という記帳法が経理には不可欠ですね。

ただ、複式簿記にも欠点がありまして、、

お分かりかと思いますが、最大の欠点は

記帳が難しい!!!

ということに尽きると思います。。

今まで当然のように

(借方)消耗品費:300 / (貸方)未払金(クレジットカード):300

などと記載してきましたが、簿記を知らない人からすれば

「何を借方に何を貸方に記載すればよいですか?」

とか、

「そもそも消耗品とか未払金(クレジットカード)って科目はどういうものですか?」

とか、

「どういう場合にどの科目を使うんですか?」

とか、こと記帳に絞ったとしてもわからないことがバンバン出てくると思うんですよね。。

この辺りも順次解説していく予定です。

ポイント
  • 単式簿記は単一の科目(現金)の取引について記帳し、複式簿記は複数の科目の取引について記帳する。
  • 単式簿記は記帳が簡単な代わりに、単一の科目(現金)以外の記帳が面倒で、得られる情報の範囲が狭く少ない。
  • 複式簿記は記帳が難しい代わりに、複数の科目の記帳が可能で、得られる情報の範囲が広く多い。

最後に

単式簿記だけではなく、複式簿記まで使いこなせるようになると、一気にお金周りへの理解が深くなります!

仕事に限らず個人の資産形成にもものすごく役に立ちますね。

複式簿記を学ぶには、ネット等で情報をあさって身に着けることも可能だと思いますが、せっかくなので資格を取ってしまったほうが色々お得かなーと思います。

日商簿記3級までなら比較的容易に取得できるので、簿記の資格取得はおすすめです!

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